東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)131号 判決
一 請求原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告の主張する審決取消事由の存否について検討する。
1 請求原因三の1の主張について
原告は、本件意匠の構成(一)ないし(四)のうちの(二)につき、審決は単に「正面の中央に円形の透孔を設け」と認定したのみであるから、小孔(透孔)について「外周胴面側は周辺形状を円形とし、内周胴面側は周辺形状を長手方向に長軸を有する楕円形状としている」重大な特徴を看過したものであり、本件意匠の構成の認定を誤つていると主張する。
しかしながら、当事者間に争いのない審決の理由によれば、審決は「両意匠を比較検討してみるに、両者には、ほとんど差らしきものは見当らず、その態様は略同一程度に酷似しているものといわなければならない。」として意匠法第三条第一項第三号の規定に該当するとしているのであるから、審決が、本件意匠と引用例の意匠とが同一であるとしたのではなく、両者が類似の意匠であると認定していることは明らかである。そして、原告の主張(請求原因三の1、2)によれば、本件意匠と引用例の意匠との構成上の差異は、本件意匠の小孔の形状については、その内周胴面側の周辺形状が長手方向に長軸を有する楕円形状である点のみであるところ、前記のように、審決が両意匠を同一であるとはしないで類似の意匠であると判断していることは、本件意匠の小孔の内周胴面側周辺形状である長手方向に長軸を有する楕円形状が、意匠全体の構成態様からみれば部分的な微差に過ぎないものと認定した結果にほかならないのであるから、審決が本件意匠の重大な特徴を看過したとか、構成の認定を誤つたとするのは当らない。
2 請求原因三の3の主張について
原告は、本件意匠と引用例の意匠とでは、前記1の差異があるにもかかわらず、審決は両者を類似の意匠であるとしているから、その判断は誤りであると主張する。
しかしながら、本件意匠と引用例の意匠の各構成が、ともに、
(一) 全体の基本形状を円筒形状とし、
(二) 正面の中央には外周胴面側の周辺形状を円形とした小孔を設け、
(三) 右小孔の中心を通つて正面の上端(左端)から下端(右端)まで一本の細い縦筋(横筋)状の透孔を設け、
(四) 全長の長さは直径の約二倍弱である
ことは当事者間に争いがないのであるから、両意匠の間には原告主張のような差異があるとはいえ、それは意匠全体の構成態様からみれば部分的な微差と認めるべきものであつて、両意匠は略同一程度に酷似しているものといわざるをえないから、原告の右主張は採用できない。
原告は、右の差異があることにより両意匠は非類似であるとして甲第五号証、第六号証を提出しているが、いずれも本件には適切でなく、右の判断を左右しうるものではない。
つぎに、原告は、本件意匠と引用例の意匠とでは、円筒部の厚さと円筒直径と円孔部の直径との相互の比率が大変異なり、両者の視覚的差異が顕著であるから、これを類似の意匠と判断したのは誤りであると主張する。
しかしながら、成立に争いのない甲第二号証、第三号証の二によれば、円筒部の厚さと円筒直径と円孔部の直径との相互の比率に若干の差異があるとはいえ、視覚上特段の差異とはいえず、意匠全体の態様からみて部分的な微差に過ぎず、両意匠は同一程度に酷似していると認められるので、原告の右主張は当らない。
三 そうすれば、審決の取消を求める原告の主張はすべて理由がないので、本訴請求は失当として棄却することとする。